日本式の知識記憶偏重型の学習方法に慣れ親しんだ日本人にとって、絶対正解の存在しないMBAの学習方法は異質なものであり、その違いに戸惑ってしまう人も少なくありません。そういった方々はMBAの学習を開始する前に、マインドセットの切り替えが必要です。ここではMBA学習の本質と、MBAに求められる学習方法についてお伝えします。

MBA学習は絶対正解有りきの記憶学習ではない 

日本は知識記憶偏重型教育の国で、より多くの知識を記憶して蓄えることが最も重要であるとされています。従って日本の試験では「〇✕式」のような絶対正解有りきの設問が設けられ、それに対する回答が求められることになります。小中高大で行われるこうした傾向の教育は、社会人が資格を取るために行う学習でも変わらず、どの設問にも必ずはっきりとした答えがあり、定められた回答でない場合は不正解という判定になります。

これに対してMBAは、資格試験のようなものとはまったく正反対で、そもそも絶対正解というものが存在していません。よってMBA学習では、学生全員の回答が異なっても良いということになります。なぜなら経営には絶対正解は無く、もしそのようなものがあるとするならば、それを学んだ人は誰一人の例外なく事業で成功出来るということになるからです。

しかし実際に我々の属している社会においてビジネスとはそのようになっておらず、MBAを学んでいなくても成功する経営者もあれば、MBAを取得しても失敗する経営者もいます。 

その理由は我々の生活している社会の多様性や複雑さにあります。社会は様々な要素で構成されていて、人間関係、取引先との信頼関係のような複雑なつながりがビジネスには存在します。また新技術や社会変革に基づく、まだ見ぬ新しいビジネスの可能性も予測・予想しながらそれらと向き合わなければなりません。

それだけではありません。パンデミックによる社会活動や生活様式の変容、地震や水害のような自然災害といった、とてつもなく大きなリスクが、ある日突然に襲い掛かってきます。こうした複雑な環境のなかで、経営者はビジネスを成功に導く必要があり、そこには「これが正解である」と絶対に言い切れるものは無いのです。よってビジネスを学ぶことには、自然の法則に支配された物理学や、数学とは全く異なるアプローチが必要であるのは当然だと言えるでしょう。

つまりMBA学習においては、そこに絶対正解があると考えることはナンセンスであるということになるのです。

だからと言ってMBAを学ぶことが無意味という訳ではありません。MBAを学ぶことで経営の筋道を知り、学んだセオリーをビジネスに活かすことで、よりビジネスを成功に導くための確率を高めることが出来るようになるからです。しかし日本人はそれまで受けてきた教育方法のゆえに、MBAを学習するにあたってはその考え方を180度転換する必要があるかもしれません。

MBA学習における日本式教育による弊害

我々日本人は、子供のころから受けてきた記憶学習のスタイルが染みついているので、絶対正解の無いMBAの学習に対しても正解を求めてしまいがちです。

 MBAとは「Master of Business Administration」の略で、日本語で訳すと経営管理学修士となりますが、そう日本語で呼ばずに、単にMBAと呼ばれるのはなぜでしょうか。それはMBAという課程自体が欧米的な発想と概念から生まれた学問分野だからというのがひとつの理由だと言えるでしょう。 

欧米では自身なりの考え方を組み立てて、それを論理的に表現するための教育が熱心に行われています。一例として「国際バカロレア」のディプロマ(大学入学資格)試験の問題で次のような設問が出されていました。

「“Literature is the sole representation of culture.”(文学は文化を代表する唯一のものである)」という引用について、授業で読んだ作品群から引用しながら、自分の考えを書け。

欧米では大学生になる前から、自分の考えを根拠づける適切な引用をすることや、それに基づいて論理的な展開して、このような設問に回答することが求められています。これは日本人が受けている記憶学習・絶対正解のある設問とは対極的なものです。ここで求められているのは、正しいひとつの答えではなく、如何に学生が持っている幅広い知識をベースにして論理展開をすることができるか、ということが問われている訳であって、そこに何らかの絶対的な答えがある訳ではありません。

先ほど、MBAとはそもそも欧米的な発想と概念から生まれた学問分野であると説明しましたが、それはこのような教育システムが根本にあることも関係していると言えるかもしれません。よって我々日本人がMBAを学習しようとする際は、こうした点をしっかりと意識して、考え方や発想の大きな転換を行うことが求められることになるでしょう。なぜなら、こうした欧米的な教育的なアプローチが前提としてあることを知らずにMBAを学習しても、記憶することや絶対正解を探す学習にばかり終始して、MBA学習によって得られる本質を見極めることが出来ないまま終わってしまうということにもなりかねないからです。

日本のMBAの現状と学校選択について 

日本の各大学等で教えられているMBAの多くは、国際的には「日本版MBA」と呼ばれていて、厳密には国際的な基準を満たしたビジネススクールが授与するMBA学位とは区別されるべきものだと捉えられています。

その理由のひとつは、日本のMBA教育は、MBAの概念や、課目における取り組み方へのアプローチが根本的に異なっている(間違えている)からです。日本のMBAスクールの中には、日本の教育スタイルの延長線上にMBAを置いているために、記憶学習を中心とした絶対正解があるかのような教育を行うところもあるようですが、これはMBAの概念からは大きくかけ離れた教育方法です。これらはあくまでも「日本版MBA」というものでしかなく、それをMBAと呼ぶことは出来ません。

これからMBAの取得を検討される方や、既にMBAスクールを探しておられる方は、MBAというものが欧米で始まり、どのような概念で組み建てられたビジネス教育なのかを良く理解しておくことが必要です。なぜならその教育方法そのものが日本の教育方法とは全く異なっているものだからです。
そしてその選別に当たってはご自身が選ばれるスクールが世界基準に沿った概念に準拠したものかどうかを注意深く見ておくことが最重要だと言えるでしょう。 

当校のMBA top-upプログラムは、英国の資格授与機関であるQualifiのPGD課程、および英国国立大学のアングリア・ラスキン大学のMBA課程で構成されており、MBAの概念にしっかりと沿った英国の教育に準拠したプログラムです。国際的に通用するMBAを取得したい方は、ぜひご検討下さい。